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Perspective

ナノテクノロジーの職業性エクスポージャー‐2015年の研究を振り返って

June 15, 2016| Von Charlie Kingdollar | P/C General Industry | Japanese | English

ナノ物質へのエクスポージャーは損害保険業界が直面を強いられる大きな課題となることでしょう。ナノテクノロジー産業は常にイノベーションと新分野への拡大を持って成長を続けています。しかしナノ粒子による健康および安全性への影響はいまだに明確なものではありません。今日そして未来にわたってアンダーライターたちによって引受されるエクスポージャーが、どこでどのように発現するかを認識するために、常にこの分野を注視していかなければなりません。

消費者に対するエクスポージャーが多くの人々が推測している以上におそらく高いと考えられる一方、保険業界にとって最も注意すべき点は恐らく職業性エクスポージャーでしょう。

物質が人体に有害なものであるかを確定することは長期的にのみ可能であり、それには長い年月が必要となります。科学が、関連性・有害性を確定または否定することができるまでにはまだ時間が必要となる一方、ナノ物質への職業性エクスポージャー、および消費者製品から生じるエクスポージャーの懸念は否定できません。

2015年を振り返り

過去数年間に世界中でナノ物質へのエクスポージャーによる有害性を取り扱った研究が発表されてきました。以下に挙げられているものは2015年に発表されたもののほんの一部です。このうちの多くは動物実験からの研究結果であるなか、人間の細胞を利用したものは恐らくシャーレ上での実験と考えられます。

  • 長さナノメートルのカーボンナノチューブが慢性肺炎および肺内での線維症(アスベストエクスポージャーで見られるものに類似した肺の瘢痕化など)の原因と なりました。研究者はこれらのナノチューブにより引き起こされる炎症および線維症反応が最も有害なアスベスト繊維であるクロシドライト(青石綿)により発 生するそれよりも重篤なものであると発表しています。1
  • 中国の研究者たちはナノサイズのカーボンブラックを吸入する作業員を観察し、「人体へのカーボンブラックのエクスポージャーと肺への長期的な影響への関係」を立証しました。2


カーボンブラックは重油製品の不完全燃焼によって生成される物質です。亜類型には、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックが挙げられます。

  • シリカナノ粒子の吸入は肺に有害です。この研究では「ナノ粒子は炎症、肺損傷、致死性肺炎への傾向の増大」が発覚しています。3
  • 「単壁カーボンナノチューブへの慢性エクスポージャーは人体肺上皮細胞のアポトーシス(細胞死)抵抗性を誘発する」。細胞死への抵抗性と聞くと良いもののように思われますが、この抵抗性により肺内に「腫瘍性形質変化および癌発展への基盤」が形成される結果となります。4
  • 二酸化ケイ素のナノ粒子が吸入されるとアテローム性動脈硬化(動脈内でのプラークの形成)の危険性が増大します。研究者たちは研究所およびハイテク装置製造設備の作業員が最も大きな危険にさらされている点を懸念しています。5
  • 低濃度金属酸化物ナノ粒子は細胞に損傷を与えます。6
  • 銀のナノ粒子へのエクスポージャーは人体の神経幹細胞死を促します。7
  • この種類では初めての研究とされているものでは、複壁カーボンナノチューブが血液脳関門を通過できることが発覚しています。8
  • 吸入されたナノ粒子は呼吸器内全体に残留し、中枢神経系へと送られます。9
  • 二酸化チタンナノ粒子は血流内で血液脳関門の調節障害を促し、中枢神経に影響を与えます。10


様々な産業セクターがナノ素材使用の可能性を異なる分野に見出す中、職業性エクスポージャーの危険性にさらされる作業員数は持続的に増大しています。

生産に関する規制が適切に行われていない国からナノ素材を輸入する二次ユーザーにはさらなる懸念が必要となるかもしれません。低価格とはいえ、このような輸入ナノ素材は有毒性を増大させるそのほかの物質により汚染されている可能性も考えられます。

2009年に塗料工場で5~13ヶ月ナノ粒子に曝露された中国の若い女性作業員(18歳から47歳)がナノ粒子をその原因とする肺疾患を患ったことが報告されています。11

今までのところ、米国内で作業員がナノ素材を原因とする疾病に罹患したことはほとんど報告されていません。ニッケルナノ粒子をほんの一週間取り扱った研究室作業員の急性疾患の一件のみです。最も懸念されるべき点は長期的・潜伏的な危険性です。ナノ技術というテーマ、そしてそのリスクが皆様の保険ポートフォリオに与える影響に関して意見交換をさせて頂きたいと思います。

 

後注
  1. ラット実験でみられるナノメートルのイモゴライト製のナノチューブをその原因とする慢性肺炎および肺内での線維症。
  2. ナノサイズカーボンブラックに曝露された作業員間で肺機能の低下および炎症性サイトカインの増加。
  3. シリカナノ粒子へ急激に曝露された緑膿菌肺炎の実験用マウスの死亡率上昇と肺透過性亢進。
  4. カーボンナノチューブのFLICE抑制タンパク質による人体の肺上皮細胞の抗アポトーシスの促進。
  5. American Technion Society、環境トキシコロジーからの引用。
  6. 環境超微粒子と人工的に加工された金属酸化物ナノ粒子により引き起こされる細胞毒性の比較。
  7. ヒトおよびラットの胚性神経幹細胞への銀ナノ粒子の影響。
  8. カーボンナノチューブと生体外血液脳関門および生体内マウス脳の相互関係。
  9. 中枢神経系への吸入された名のサイズ粒子の影響。
  10. 静脈内に投与された二酸化チタンナノ粒子の組織生体内分布とラット実験での血液脳関門のクリアランスおよび脳の炎症。
  11. ナノ粒子への曝露と胸水、肺線維症および肉芽腫の関連性。

 

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